幼い頃からかたくなに守り続けてきたもの・・それは・・
マルシエロの心の音色をたどるMarcielo History
Vol. 3 原風景を壊されたくない・・芸大時代の葛藤・・ 
 高校生になってその後の進路には全く悩みませんでした。国立でお金もかからないし、もう芸大しかないと思っていました。実は受かった時も「やったー!」という感じではなかったんです。嬉しいよりも「これから始まるんだ」という緊張感の方が強かった。暗黒時代に向かっていくのでは?と勝手に思っているところもあって(笑)。初めて大学のキャンパスに足を踏み入れた時も、初々しい気持ちよりこれから混沌と立ち向かうという覚悟みたいな、そういうところにいました。
 何故かと言うと、高校の頃からそれまで触れなかった音楽、ラヴェルとかドビュッシーなど幅広く聞くようになったのですが、その時に自分の資質と違う音楽に触れることに対して恐怖心を覚えていたのです。違うものに触れて自分自身を見失ってしまうのではないか、浸食されることが怖かった。ショスタコーヴィチに夢中になっていた頃、その時のものが一番いい、最善の美だ、音楽で一番大事な部分だと思っていた。頑固だったと思います。そうではない音楽の良さもあるということを自分の中で消化するのに時間がかかりました。
 その頑なさを持ったまま芸大に入ったわけです。勉強という意味でいろいろなことを知るのは必要だと思っていましたが、その一方、別の情報が入ってしまうことで幼年時代から思い描いていた世界や原風景、それが壊されてしまうことが怖い、ということも一緒にありました。だから大学時代は暗かったですよ(笑)写真も見たくないですね。音楽学生が集ったようなアパートに暮らしていたので友人との出会いも多かったし、大学生活はそれはそれで楽しいことも多かったですが、一方心の中で葛藤していたという感じです。    To be continued.
Vol.4 自分と音符だけの世界を脱皮、「Novella」の誕生・・
Photo by Hiroyuki Takei 撮影協力 ル・ミディ