***ROSE TREE STUDIO が贈る薔薇物語***
 
 

長編歴史ファンタジー小説「薔薇の使命 -Rosa’s Mission- 」掲載中 




深く華やかに薫るクラシックアンビエントの世界。
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「ノヴェッラ」マルシエロ
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***ROSETREE STUDIO が贈る薔薇物語***

  長編歴史ファンタジー小説「薔薇の使命 -Rosa’s Mission- 」掲載中
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  2009/12/6 UP
「薔 薇 の 使 命 ―Rosa’s Mission―」
  プロローグ 1 
―紫紺の蝶―
903年 日本・京都
 

吊り香炉から、えも言われぬ香の薫り。
薬玉のように丸いその香炉には、優美な草花紋様が施されている。
沈香、白檀の他、様々な草根木皮を加え、時平のために特別に調合された匂いが、空間を染めるように漂っている。
時平はこの匂いをことのほか好んだ。
彼の居た場所、通った所には、必ずこの匂いが佇んでいた。
ひらがなをこよなく愛し、日本の文化復興を願い、古今和歌集を編纂した若き藤原家の御曹司。

 

その時平が今、虫の息で床に伏している。
彼を囲むように藤原一族、家臣、女房らが一同に並ぶ中、一番後方に座している男は口を真一文字に結び、身じろぎもしない。
時平様は、あまりにも早い死を迎えようとしている。
このままお亡くなりになるのは、あまりにも残念無念。
あなたの本当のお姿を誰が知りましょうか。
菅原道真公追放の張本人という悪の仮面、鏡に映った虚像のみ残して、このまま、逝ってしまわれるとは、、、。

 

はっと男は息を飲む。
突然、時平の上半身がぐいとそり上がった。
ぽっかり開いた彼の口から、胡蝶が、、、
ぬれぬれとした生まれたての蝶が、、、今、舞い上がったではないか。
幻影か。
他の者には見えぬらしい。
と、その時、時平の乾いた唇がかすかに動いた。
声は男のところまでは聞こえない。思わず膝を立てる。
「は? 何と? 鞠? 蹴鞠でございますか?」
一番近くの側近が、枕元ににじり寄って耳元で聞き返している。
「は、はて、庭の鞠は、、、どこに行ったものやら、、、。」

  (ちがう! 時平様はそんなことを言おうとしているのではない!)
悔しさのあまり、太股の上で固く結んだ握り拳が震える。
男の心の叫びとともに、藤原時平、絶命。
903年、ジパング。
  紫紺の蝶がひらひらと 時のはざまを平ひらと
どこぞの国へ参られる、、、。
  プロローグ 2
―悪魔のタクト―
1570年、イタリア・アマルフィ
  気がつくと女は海を見下ろす崖の上にぼんやりと佇んでいた。
今日の海はいつもと違う。陰鬱な雲が低くたれ込めている。
強風のため人影もない。
海の上を渦巻く風に上手に乗りながら、カモメだけが宙をすべる。
  「天罰、、、」
その言葉に支配され続け、日ごと病んでいく心。
今、女には周りの景色は全く見えない。
どんどん狭くなる視界に映るのは海。
赤紫の異様な色に変化している海だけ。
  「天罰、、、」
その言葉が創り出す世界が、ゆっくりと大きく口を開く。
吹き付ける強風が耳元でごぉーと唸っている。
女は岸壁に一歩身を乗り出す。
 

険しい岩肌にたたきつけられ、狂ったように砕け散る波。
ふっと、自分が赤子を抱いていることに気づく。
羊毛のマントにくるまれ、静かに瞳を閉じている幼い我が子。
青ざめこわばった顔が一瞬、ほころぶ。
女は赤子をゆっくりと大地に降ろした。
風が止み、どこからか蝶が迷い込む。
地面に置かれた赤子の額にぴたっと止まり、張りついたように動かない。
女は息を飲んで、その光景を見つめている。
蝶はゆっくりと2度、羽根を開いた。まるでその額に洗礼を施すように、、、。

 

「ああ、この子は今、、、 花の洗礼を受けた。」
幻の蝶がもたらした、最後の平安。
女はほっとしたような笑みを浮かべ、ぬぅっと立ち上がる。
待ちかまえたように、悪魔がタクトを振り始める。
海から立ち登る異様なリズム。
風と雨と波しぶきの、うめくような声が重なる。

  狂乱のボレロ。
罪という名に犯された心が、躍る、踊る、踊る。
女は瞳を閉じ、空中に足を一歩、踏み出した。
  紫紺の蝶がひらひらと  時のはざまを平ひらと
どなたの元へ参られる、、、。
 
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